大阪地方裁判所 昭和46年(ワ)3659号 判決
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〔判決理由〕一、請求原因第一項の事実および被告の原告に対する本件執行債権額が元利合計金二五万一、三七〇円であることは当事者間に争いのないところ、<証拠>を総合すると、本件不動産の価額は別紙目録(1)記載の宅地が金六二四万四、七〇〇円、同(2)記載の宅地が金二八六万一、二〇〇円、同(3)記載の宅地が金二二三万九、四〇〇円、同(4)記載の建物が金四九万三、〇〇〇円(合計金一、一八三万八、〇〇〇円)であることが認められ、右認定に反する証拠はない。すると、被告のなした本件競売申立は、執行債権額および強制執行の費用額をはるかに超過する物件に対してなされたものといわなければならない。
二 ところで、金銭債権の強制執行としての動産の差押については、執行債権および執行費用を償うために必要なもののほかにこれを及ぼすことがきできないこと、すなわちいわゆる超過差押が禁止されていることは民訴法五六四条二項の明定するところであるが、不動産に対する強制執行については直接そのような規定は存在せず、しかも、我が強制執行法がいわゆる平等主義の建前を採用しているところから、執行債権者としては、強制執行の目的を達するためには、他の債権者の配当加入を見越して、執行債権額以上に債務者の財産を差押えておかざるをえないわけであつて、超過差押の禁止はもともと平等主義の建前にそぐわないというよりほかはなく、したがつて、動産執行に関する前記法条をただちに不動産執行の場合にも準用することは必ずしも当を得たものではないと考えられるのである。のみならず、数個の不動産を競売に付した場合において、ある不動産の売得金をもつて債権者に弁済をなし、強制執行の費用を償うにたるときは、他の不動産については競落を許さないとする民訴法六七五条の規定からすると、不動産に対する強制執行においては、いわゆる超過差押は、競売申立の段階ではなくて、競落の許否を決定する段階でその適否を判断すべきものとするのが強制執行法の趣旨とするところであるともみられるのであつて、これらの諸点を総合して考えるならば、強制執行法上、不動産に対する強制執行については、動産に対する強制執行の場合におけるような超過差押の禁止はないものと解するのが相当であり、したがつて、本件競売申立も執行法上はなんら違法なものではないといわなければならない。
三 しかしながら、強制執行法上はなんら違法とはいえない執行行為であつても、それが執行権の濫用に当ると認められるような場合においては、実体法上は違法な行為として不法行為を構成することが明らかである。そこで次に、本件競売の申立が執行権の濫用に当るかどうかについて検討するに、<証拠>を総合すると、本件執行債権の額と本件不動産の価額との格差はきわめて大きく、四個の不動産のうちいずれをとつてみても、本件執行債権額をはるかに上廻つていること、さらに、被告は昭和四〇年五月四日、本件執行債権を保全するため、原告の訴外株式会社三和銀行に対する預金債権につき仮差押決定(仮差押の事実は当事者間に争いがない。)を得ていたが、その後、前記仮執行宣言付判決を得ながら、右仮差押の本執行への移行によつて右債権の満足をはかろうとすることなく、本件不動産の競売の申立に及んだことが認められるけれども、他方右各証拠によると、右仮差押決定に対しては直ちに原告から異議の申立(大阪地方裁判所昭和四〇年(保モ)第二、〇二五号仮差押異議事件)がなされたばかりでなく、右仮差押にかかる預金債権の額は金一八万九、〇〇〇円の限度であつて、本件執行債権の額に達していなかつたこと、また、本件競売の申立に先立つて被告は、昭和四五年六月八日原告所有の有体動産(その評価額二五万二、〇〇〇円)を差押えた(大阪地方裁判所昭和四五年執(イ)第二、一二八号事件)が、同月一五日訴外生悦住守夫から、原告に対して金五〇〇万円の貸金債権を有していると称して配当要求の申立がなされたので、右動産の競売代金から十分な配当を受けうる見込がなくなつたものと判断して右差押の申立を取下げ、あらためて本件不動産競売の申立に及んだこと、本件不動産のうち、別紙物件目録(2)記載の土地について原告主張のごとき売買契約が締結されているなど、被告は全く知らなかつたこと(右売買契約が実際に締結されていたかどうか自体、本件証拠上必ずしも明らかとはいいがたい。)がそれぞれ認められ、右認定に反する証拠はない。
しかして、以上認定の各事実を総合して考えるならば、被告の本件競売の申立が執行権の濫用に当るものとはとうてい認めがたく、これをもつて不法行為を構成するものとすることはできない。
(林繁 藤原弘道 佐藤康)